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要注意!上空での飲酒は地上よりも酔いの回りが早い

2002年2月18日、オランダのアムステルダムからアメリカ・ロサンゼルスに向かうユナイテッド航空機で珍事件が起こった。同機に乗りこんだ、100年以上の歴史を誇るロシアの国立楽団「サンクトペテルブルグ交響楽団」の一行約90名が、離陸後、やおら手荷物からウォッカをとり出し、それぞれに飲みはじめたのである。やがて酔いが回ると、大声を張りあげたり、客席をうろついたりするなどの迷惑行為におよび、乗務員が何度注意しても従わない。周りの乗客もほとほと困りはてていた。

同機が経由地のワシントンに到着したとき、パイロットの判断で、ついに一行は全員、強制的に降ろされるはめになった。ワシントンで一泊して酔いをさました楽団員は、翌日は打って変わってマナーのよい「模範客」となり、無事、目的地のロサンゼルスに到着したそうだ。その後、全米を巡回した公演では、みごとな演奏を聴かせたという。

乗客が名門楽団員であるかどうかにかかわらず、フライトでは、「酒に酔った客」ほど迷惑な存在はない。決して広いとはいえない機内で、近くの客が酔って騒ぎはじめたら、どれだけ不快な思いをするか、簡単に想像できることだ。さらにつけ加えるなら、上空で酒を飲むと、地上で飲むときよりもずっと酔いが回りやすくなることも知っておくべきだろう。

アメリカのオクラホマ航空医学研究所では、1万フィート(約3050m)上空、1万2000フィート(約3660m)上空と同じ状態に気圧を下げた部屋で飲酒し、地上における飲酒と酔いを比較する実験を行なった。それによると、飲酒後の血中アルコール濃度が、地上では血液100dl中50mgだった人が、1万フィート上空の状態では95mg、1万2000フィート上空では、さらに倍の190mgと計測されたのである。

上空では気圧が低くなるため、酔いが回りやすくなるということだ。ジェット旅客機の場合、短距離の国内線でも7000~8000m、長距離の国際線なら1万1000m~1万3000mくらいの飛行高度をとっているか、機内の気圧は与圧で調整されているので、実際の機内気圧は1500m~2400m上空とほぼ同じ程度の気圧である。したがって、酔いやすさは地上の2倍弱といったところだろうか。

旅客機のなかでは、ほろ酔い気分を楽しむつもりが、結果は泥酔・・・などということにもなりかねないということである。機内でアルコールをたしなむときは、そのことも頭の片隅において、酒量は抑え気味にするのが賢明といえるだろう。

— posted by 渉 at 06:33 pm  

客室の天井裏と床下には何があるの?

旅客機の客室にひとたび足を踏み入れると機体が円筒形をしていたことを忘れてしまいそうになる。窓のある壁側かゆるやかなカープを描いていることを除けば天井も床も電車やバスのなかと変わらず平らな板が張られているからだ。確かにもし天井も床も弧を描いていたらかなり不便である。

床が丸かったら真直ぐ立って歩くこともできないし、物を置いても低い方へと転がり落ちてしまうだろう。ではそうした不便を解消するために平らな板で仕切られた天井裏と床下には何かあるのだろうか?一般の人がその内部を目にすることはまずないが、整備士にとってはお馴染みの光景だ。

床下は乗客の荷物や貨物を積む貨物室になっている。ということは貨物室の天井(客室の床)は平らだが、その床は機体の輪郭に沿ってやっぱり半月のような弧を描いているのだ。荷物や貨物の収納場所としても丸い床は不向きといえるが、そこには工夫が施されている。

貨物は床下貨物室に直接放りこむわけではなく床下用の貨物コンテナに収納してから機内に収める。このコンテナか半月型の貨物室にすっぽり収まるように、直方体の底にあたる角をとったような形をしているのだ。一方、天井裏には空調や電気などの配管やケーブル類が通っている。なかでも重要なのがコックピットの操縦装置から各操縦翼面(昇降舵、方向舵、補助翼など)につながるフライト・コントロール・ケーブルだ。

例えばパイロットが操縦梓を前後に動かすと水平尾翼の縁についている昇降舵が上下し、機首が上がったり下がったりする。フライト・コントロール・ケーブルは、こうした操縦禅の動きを昇降舵に伝える働きをしているのである。操縦装置から昇降舵のついた尾翼までは旅客機の全長にも達する距離だ。つまりジャンボ機(ボーイング747)では70m以上の長さにもなる。

フライト・コントロール・ケープルは操縦の根幹にかかわる重要なケーブルであるため温度変化や機体振動で誤作動が生じたりしたら大変だ。そのためケーブルに支障が起こらないように厳密に環境管理が行なわれているほか、定期的なチェックもなされている。

また天井が吹き飛ぶといった事故が起こった際、このケーブルが切断されていきなり操縦不能となるおそれもある。こうした点を考慮して実は同じケーブルが床下にも通してあるのだ。万一の状況にも備え、機体の安全は十二分に確保されているといってよい。

— posted by 渉 at 01:04 pm  

トイレの便座で内臓を吸いとられた乗客がいるってホント?

答えは「YES」。では、いったいなぜそんな恐ろしい出来事が起こったのだろうか。旅客機のトイレのしくみは、大きく分けて2種類ある。ひとつはジャンボ機(ボーイング747)やDC-10型機などにみられる方式で、「循環式」と呼ばれている。1960年代から普及した方式で、用を足したあと水を流すと、トイレの下にあるタンクに汚物が溜まり、水だけは濾過(ろか)して何度も再利用できるようにした形のものだ。

ただし、この方式はすでに旧式であり、いまは1980年代から登場した「バキューム式」が主流となっている。ボーイング「767」や「777」などの比較的新しい機種では、みなこの方式を採用している。バキューム式は、水量はコップー杯程度しか使わず、あとは空気を勢いよく吸いこむ方式だ。汚物の処理能力が高い(トイレのなかに汚物か残らない)うえ、水を少ししか使わないという経済性が支持されている。

しかし、乗客が内臓を吸いとられるという不幸な出来事は、画期的とされる、この最新式のトイレで起こった。バキューム方式では、トイレと汚物タンクをつなぐパイプが機外に通じる構造になっており、ふだんはパイプのバルブが閉じているが、汚物を流すときにフラッシュボタンを押すと、このバルブが一時的に開くしくみになっている。バルブが開いた瞬間、機内外の気圧差(機内は約0.8気圧、機外は約0.2気圧)のために、便器のなかの汚物が空気と一緒にパイプを通り、猛烈な勢いで吸い出されるのである。

問題の乗客はおそらく体格のよい人で、腰掛けたとき、大きなお尻が便座の穴をふさいでしまったのだろう。その状態のままフラッシュボタン押したために、一瞬にして便器のなかは真空状態になり、体の内臓までが一緒に吸いこまれてしまったということだ。これほどの事態にはいたらないまでも、便座からお尻が抜けなくなってしまう乗客は少なからずいたということである。

しかし、この深刻なトラブルは、いまやすでに解消されている。お尻が便座をふさいでしまったのは、便座がO型だったためだ。これをU型に変えることで、問題は即座に解決した。だから、皆さんも新型のバキューム式トイレを恐れることなく、安心して用を足していただきたい。水分をよくとり、トイレをがまんしないことが、「エコノミークラス症候群」の予防にも大切なことなのだから。





— posted by 渉 at 03:07 pm  

旅客機は適温に保たれてるのにエアコンがないってホント?

機外が灼熱地獄のように暑くても、また凍えるほど寒くても、旅客機に乗りこむと適温に保たれ、居心地よく感じられる。よほど強力なエアコンが搭載されているのだろうと思われるかもしれないが、旅客機には家庭やオフィスで使われるようなエアコンはついていない。ただし、ジェット機ならではの「エアコン」が備えられている。

旅客機の空調は、エンジンで行なわれている。旅客機のジェットエンジンでは、燃料を燃やすための空気を必要とするため、上空で空気を吸いこみ、圧縮したものに燃料を混ぜて燃やしている。この空気を一部抜きとって、機内に送りこんでいるのである。このとき、圧縮された空気は約2気圧、850度Cという高温のため、そのままでは使えない。

そこで、急速に膨張させるのだが、その結果、空気の温度は一気に約0度Cまで下がってしまい、今度は冷えすぎで使えない。そこで、これに、エンジンからとり出した高温の空気を少しずつ混ぜて、適温にしてから客室に送りこむのである。こうして、機内の温度はおおむね25度C前後に保つことができる。

ところで、この適温の空気を客室に送りこむ送風口は天井にあるが、空気を供給するエンジンは客室よりも低い位置の主翼にあるため、床下から天井にダクト(配管)を通さなければならない。ところが、客室にはダクトを通すスペースがないので、胴体(壁のなか)を通すしかないのだ。その結果、客席に沿って備えられている窓のいくつかは、ダクトを通すための犠牲となる。

エンジンのある主翼付近の胴体には、何ヵ所か窓のない座席があるのにお気づきだろうか。不運にも窓のない席を割り当てられた人はがっかりされるだろうが、客室内を快適な温度に保つためには仕方がないのだと、大目に見てほしい。

大型旅客機では機内の空調を一ヵ所で行なうと、冷えすぎの場所や暑すぎる場所ができてしまうため、機内をいくつかのゾーンに分け、個別に空調を行なっている。ジャンボ機(ボーイング747)では、このゾーンは7つに分けられている。

— posted by 渉 at 01:12 am  

 

旅客機はなぜ燃料満タンなのに最大定員で離陸できないの?

旅客機には、離陸のときに超えてはならない重量の定めがあり、これを「最大離陸重量」という。最大離陸重量には、運航自重「機体+パイロットや客室乗務員+乗客へのサービス機材(食料やトイレの水など)」のほか、ペイロード「乗客+手荷物+貨物」や燃料の重量も含まれる。ペイロードとは、運賃をもらってのせる物(者)の重量という意味だ。

たとえば、ボーイング「777-200」型機の場合、運航自重は139t(トン)、最大ペイロードが51t(トン)、積める燃料は約80t(トン)で、合計270t(トン)になる。しかし、同機の最大離陸重量は229t(トン)と決められている。つまり、燃料を満タンに積んでも、最大定員をのせて離陸することはできないのである。なぜなのか。

機体の性能から導かれる最大離陸重量は最初から決まっていて、この値は変えようがない。また、機体の重さがほとんどを占める運航自重も、大きく変えられるものではない。しかし、最大離陸重量から運航自重を差し引いた分にあたるペイロードと燃料は、調整が利くものだ。

たとえば、短距離の国内線なら燃料は少なくてすむので、そのぶん乗客をたくさんのせることができる。一方、長距離の国際線ではそれなりの燃料が必要なので、燃料の重さがかかるぶん、乗客数を減らさざるをえない。日本で飛んでいるジャンボ機(ボーイング747)の場合、国内線向けの「400」型機が568席あるのに対し、国際線用の同機の座席数が524しかないというのが、そのあかしだ。

つまり、最大定員をのせるなら燃料は少なめにし、燃料がたっぷり必要なら定員数を減らすという調整ができるよう考慮したうえで、両者の最大値は決められているのである。実際、こうした融通が利かないと、航空会社のビジネスが成り立たなくなる。

たとえば、燃料満タンにして、東京からカリブ海の島々までならノンストップで飛ぶことは、旅客機の性能上は可能だが、そのために乗客数を大幅に制限しなければならす、コストに見合ったペイロードが得られなくなる。また、成田-ニューヨーク間を500人乗りのジャンボ機がノンストップで飛ばないのも、ペイロードを優先的に獲得するため、十分な燃料が積めないからだ。

さらにいえば、燃料は基本的には必要量だけ積むもので、余分な搭載はしない。たくさん積めば、それだけ機体が重くなり、燃費が悪くなるからだ。そのため、国内線などの短距離路線では、最大離陸重量以下で飛行することがめずらしくない。

— posted by 渉 at 12:58 am