ジャンボ機の窓から見える翼のものすごいしくみ

ジャンボ機(ボーイング747)の主翼に近い座席に座ったことがあるだろうか。「翼が邪魔で景色が見えない」などと嘆くことなかれ。そのときは、ぜひ、主翼に装備されている「フラップ」の動きをたっぷり楽しんでほしい。

フラップとは「下げ翼」といい、主翼の前側と後ろ側についている可動式の部分で、それを曲げたり伸ばしたりすることで、揚力の大きさを調整するものである。フラップを曲げると翼のカーブの角度が大きくなり、揚力が増す。揚力は、機体を空中に浮かせるために欠かせない力だが、常に大きければ大きいほどよいというものではない。

たとえば、離着陸のときは低速状態なので揚力か不足するが、上空を高速で飛んでいるときには、揚力が余ってしまうこともある。もっと揚力がほしいというとき、逆に揚力を少し減らしたいというとき、状況に応じて主翼の形に変化をもたせ、揚力を調整することができると、安定した飛行が可能になる。

実は、ジャンボは機体の大きさのわりには主翼が小さい。もし、400t(トン)もあるジャンボ機を離着陸させようと思ったら、相応の揚力を得るためにとてつもなく大きな翼が必要になる。そこで、小さめの翼でも離着陸時に十分な揚力を得るために画期的なフラップがとりつけられた。「トリプル・スロッテッド・フラップ」(3重隙間フラップ)がそれだ。

もともとフラップは主翼の一部を祈り曲げるものだったが、このトリプル・スロッテッド・フラップは、3枚重ねになったフラップを後方にスライドさせて広げ、翼面積そのものを増加させたうえで、折れ曲がるしくみになっている。その効果をみると、フラップを単純に折り曲げるだけで揚力は50%増すが、フラップ一枚をスライドさせて折り曲げれば2倍になる。それが3枚になれば、3倍以上の揚力を獲得できるといわれている。

一方、ジャンボ機には主翼前縁にも、2段式で下向きに伸びていくフラップが装備されている。これも着陸時の揚力アップを助ける強力な「武器」だ。そして、興味深いのは、フラップのしくみだけではない。フラップが主翼の下から滑り出してくるときの動きが、また、おもしろいのである。後ろ側のフラップは、ブラインドのように、1枚ずつ後方に伸びていく。

前側のフラップはふだんは翼の下に折り畳まれているが、「出動命令」を受けるとグルリと回転して顔を出し、下方に伸びながら折れ曲がっていく。まるで、SFアニメに出てくる重装備の戦闘ロボットが、強敵を相手にメカ変身する趣だ。主翼近くの座席に座れば、ひと味違った空の旅が楽しめるはずである。

— posted by 渉 at 12:48 am