旅客機はなぜ燃料満タンなのに最大定員で離陸できないの?

旅客機には、離陸のときに超えてはならない重量の定めがあり、これを「最大離陸重量」という。最大離陸重量には、運航自重「機体+パイロットや客室乗務員+乗客へのサービス機材(食料やトイレの水など)」のほか、ペイロード「乗客+手荷物+貨物」や燃料の重量も含まれる。ペイロードとは、運賃をもらってのせる物(者)の重量という意味だ。

たとえば、ボーイング「777-200」型機の場合、運航自重は139t(トン)、最大ペイロードが51t(トン)、積める燃料は約80t(トン)で、合計270t(トン)になる。しかし、同機の最大離陸重量は229t(トン)と決められている。つまり、燃料を満タンに積んでも、最大定員をのせて離陸することはできないのである。なぜなのか。

機体の性能から導かれる最大離陸重量は最初から決まっていて、この値は変えようがない。また、機体の重さがほとんどを占める運航自重も、大きく変えられるものではない。しかし、最大離陸重量から運航自重を差し引いた分にあたるペイロードと燃料は、調整が利くものだ。

たとえば、短距離の国内線なら燃料は少なくてすむので、そのぶん乗客をたくさんのせることができる。一方、長距離の国際線ではそれなりの燃料が必要なので、燃料の重さがかかるぶん、乗客数を減らさざるをえない。日本で飛んでいるジャンボ機(ボーイング747)の場合、国内線向けの「400」型機が568席あるのに対し、国際線用の同機の座席数が524しかないというのが、そのあかしだ。

つまり、最大定員をのせるなら燃料は少なめにし、燃料がたっぷり必要なら定員数を減らすという調整ができるよう考慮したうえで、両者の最大値は決められているのである。実際、こうした融通が利かないと、航空会社のビジネスが成り立たなくなる。

たとえば、燃料満タンにして、東京からカリブ海の島々までならノンストップで飛ぶことは、旅客機の性能上は可能だが、そのために乗客数を大幅に制限しなければならす、コストに見合ったペイロードが得られなくなる。また、成田-ニューヨーク間を500人乗りのジャンボ機がノンストップで飛ばないのも、ペイロードを優先的に獲得するため、十分な燃料が積めないからだ。

さらにいえば、燃料は基本的には必要量だけ積むもので、余分な搭載はしない。たくさん積めば、それだけ機体が重くなり、燃費が悪くなるからだ。そのため、国内線などの短距離路線では、最大離陸重量以下で飛行することがめずらしくない。

— posted by 渉 at 12:58 am