客室の天井裏と床下には何があるの?

旅客機の客室にひとたび足を踏み入れると機体が円筒形をしていたことを忘れてしまいそうになる。窓のある壁側かゆるやかなカープを描いていることを除けば天井も床も電車やバスのなかと変わらず平らな板が張られているからだ。確かにもし天井も床も弧を描いていたらかなり不便である。

床が丸かったら真直ぐ立って歩くこともできないし、物を置いても低い方へと転がり落ちてしまうだろう。ではそうした不便を解消するために平らな板で仕切られた天井裏と床下には何かあるのだろうか?一般の人がその内部を目にすることはまずないが、整備士にとってはお馴染みの光景だ。

床下は乗客の荷物や貨物を積む貨物室になっている。ということは貨物室の天井(客室の床)は平らだが、その床は機体の輪郭に沿ってやっぱり半月のような弧を描いているのだ。荷物や貨物の収納場所としても丸い床は不向きといえるが、そこには工夫が施されている。

貨物は床下貨物室に直接放りこむわけではなく床下用の貨物コンテナに収納してから機内に収める。このコンテナか半月型の貨物室にすっぽり収まるように、直方体の底にあたる角をとったような形をしているのだ。一方、天井裏には空調や電気などの配管やケーブル類が通っている。なかでも重要なのがコックピットの操縦装置から各操縦翼面(昇降舵、方向舵、補助翼など)につながるフライト・コントロール・ケーブルだ。

例えばパイロットが操縦梓を前後に動かすと水平尾翼の縁についている昇降舵が上下し、機首が上がったり下がったりする。フライト・コントロール・ケーブルは、こうした操縦禅の動きを昇降舵に伝える働きをしているのである。操縦装置から昇降舵のついた尾翼までは旅客機の全長にも達する距離だ。つまりジャンボ機(ボーイング747)では70m以上の長さにもなる。

フライト・コントロール・ケープルは操縦の根幹にかかわる重要なケーブルであるため温度変化や機体振動で誤作動が生じたりしたら大変だ。そのためケーブルに支障が起こらないように厳密に環境管理が行なわれているほか、定期的なチェックもなされている。

また天井が吹き飛ぶといった事故が起こった際、このケーブルが切断されていきなり操縦不能となるおそれもある。こうした点を考慮して実は同じケーブルが床下にも通してあるのだ。万一の状況にも備え、機体の安全は十二分に確保されているといってよい。

— posted by 渉 at 01:04 pm