トイレの便座で内臓を吸いとられた乗客がいるってホント?

答えは「YES」。では、いったいなぜそんな恐ろしい出来事が起こったのだろうか。旅客機のトイレのしくみは、大きく分けて2種類ある。ひとつはジャンボ機(ボーイング747)やDC-10型機などにみられる方式で、「循環式」と呼ばれている。1960年代から普及した方式で、用を足したあと水を流すと、トイレの下にあるタンクに汚物が溜まり、水だけは濾過(ろか)して何度も再利用できるようにした形のものだ。

ただし、この方式はすでに旧式であり、いまは1980年代から登場した「バキューム式」が主流となっている。ボーイング「767」や「777」などの比較的新しい機種では、みなこの方式を採用している。バキューム式は、水量はコップー杯程度しか使わず、あとは空気を勢いよく吸いこむ方式だ。汚物の処理能力が高い(トイレのなかに汚物か残らない)うえ、水を少ししか使わないという経済性が支持されている。

しかし、乗客が内臓を吸いとられるという不幸な出来事は、画期的とされる、この最新式のトイレで起こった。バキューム方式では、トイレと汚物タンクをつなぐパイプが機外に通じる構造になっており、ふだんはパイプのバルブが閉じているが、汚物を流すときにフラッシュボタンを押すと、このバルブが一時的に開くしくみになっている。バルブが開いた瞬間、機内外の気圧差(機内は約0.8気圧、機外は約0.2気圧)のために、便器のなかの汚物が空気と一緒にパイプを通り、猛烈な勢いで吸い出されるのである。

問題の乗客はおそらく体格のよい人で、腰掛けたとき、大きなお尻が便座の穴をふさいでしまったのだろう。その状態のままフラッシュボタン押したために、一瞬にして便器のなかは真空状態になり、体の内臓までが一緒に吸いこまれてしまったということだ。これほどの事態にはいたらないまでも、便座からお尻が抜けなくなってしまう乗客は少なからずいたということである。

しかし、この深刻なトラブルは、いまやすでに解消されている。お尻が便座をふさいでしまったのは、便座がO型だったためだ。これをU型に変えることで、問題は即座に解決した。だから、皆さんも新型のバキューム式トイレを恐れることなく、安心して用を足していただきたい。水分をよくとり、トイレをがまんしないことが、「エコノミークラス症候群」の予防にも大切なことなのだから。





— posted by 渉 at 03:07 pm