旅客機は適温に保たれてるのにエアコンがないってホント?

機外が灼熱地獄のように暑くても、また凍えるほど寒くても、旅客機に乗りこむと適温に保たれ、居心地よく感じられる。よほど強力なエアコンが搭載されているのだろうと思われるかもしれないが、旅客機には家庭やオフィスで使われるようなエアコンはついていない。ただし、ジェット機ならではの「エアコン」が備えられている。

旅客機の空調は、エンジンで行なわれている。旅客機のジェットエンジンでは、燃料を燃やすための空気を必要とするため、上空で空気を吸いこみ、圧縮したものに燃料を混ぜて燃やしている。この空気を一部抜きとって、機内に送りこんでいるのである。このとき、圧縮された空気は約2気圧、850度Cという高温のため、そのままでは使えない。

そこで、急速に膨張させるのだが、その結果、空気の温度は一気に約0度Cまで下がってしまい、今度は冷えすぎで使えない。そこで、これに、エンジンからとり出した高温の空気を少しずつ混ぜて、適温にしてから客室に送りこむのである。こうして、機内の温度はおおむね25度C前後に保つことができる。

ところで、この適温の空気を客室に送りこむ送風口は天井にあるが、空気を供給するエンジンは客室よりも低い位置の主翼にあるため、床下から天井にダクト(配管)を通さなければならない。ところが、客室にはダクトを通すスペースがないので、胴体(壁のなか)を通すしかないのだ。その結果、客席に沿って備えられている窓のいくつかは、ダクトを通すための犠牲となる。

エンジンのある主翼付近の胴体には、何ヵ所か窓のない座席があるのにお気づきだろうか。不運にも窓のない席を割り当てられた人はがっかりされるだろうが、客室内を快適な温度に保つためには仕方がないのだと、大目に見てほしい。

大型旅客機では機内の空調を一ヵ所で行なうと、冷えすぎの場所や暑すぎる場所ができてしまうため、機内をいくつかのゾーンに分け、個別に空調を行なっている。ジャンボ機(ボーイング747)では、このゾーンは7つに分けられている。

— posted by 渉 at 01:12 am  

 

旅客機はなぜ燃料満タンなのに最大定員で離陸できないの?

旅客機には、離陸のときに超えてはならない重量の定めがあり、これを「最大離陸重量」という。最大離陸重量には、運航自重「機体+パイロットや客室乗務員+乗客へのサービス機材(食料やトイレの水など)」のほか、ペイロード「乗客+手荷物+貨物」や燃料の重量も含まれる。ペイロードとは、運賃をもらってのせる物(者)の重量という意味だ。

たとえば、ボーイング「777-200」型機の場合、運航自重は139t(トン)、最大ペイロードが51t(トン)、積める燃料は約80t(トン)で、合計270t(トン)になる。しかし、同機の最大離陸重量は229t(トン)と決められている。つまり、燃料を満タンに積んでも、最大定員をのせて離陸することはできないのである。なぜなのか。

機体の性能から導かれる最大離陸重量は最初から決まっていて、この値は変えようがない。また、機体の重さがほとんどを占める運航自重も、大きく変えられるものではない。しかし、最大離陸重量から運航自重を差し引いた分にあたるペイロードと燃料は、調整が利くものだ。

たとえば、短距離の国内線なら燃料は少なくてすむので、そのぶん乗客をたくさんのせることができる。一方、長距離の国際線ではそれなりの燃料が必要なので、燃料の重さがかかるぶん、乗客数を減らさざるをえない。日本で飛んでいるジャンボ機(ボーイング747)の場合、国内線向けの「400」型機が568席あるのに対し、国際線用の同機の座席数が524しかないというのが、そのあかしだ。

つまり、最大定員をのせるなら燃料は少なめにし、燃料がたっぷり必要なら定員数を減らすという調整ができるよう考慮したうえで、両者の最大値は決められているのである。実際、こうした融通が利かないと、航空会社のビジネスが成り立たなくなる。

たとえば、燃料満タンにして、東京からカリブ海の島々までならノンストップで飛ぶことは、旅客機の性能上は可能だが、そのために乗客数を大幅に制限しなければならす、コストに見合ったペイロードが得られなくなる。また、成田-ニューヨーク間を500人乗りのジャンボ機がノンストップで飛ばないのも、ペイロードを優先的に獲得するため、十分な燃料が積めないからだ。

さらにいえば、燃料は基本的には必要量だけ積むもので、余分な搭載はしない。たくさん積めば、それだけ機体が重くなり、燃費が悪くなるからだ。そのため、国内線などの短距離路線では、最大離陸重量以下で飛行することがめずらしくない。

— posted by 渉 at 12:58 am  

 

ジャンボ機の窓から見える翼のものすごいしくみ

ジャンボ機(ボーイング747)の主翼に近い座席に座ったことがあるだろうか。「翼が邪魔で景色が見えない」などと嘆くことなかれ。そのときは、ぜひ、主翼に装備されている「フラップ」の動きをたっぷり楽しんでほしい。

フラップとは「下げ翼」といい、主翼の前側と後ろ側についている可動式の部分で、それを曲げたり伸ばしたりすることで、揚力の大きさを調整するものである。フラップを曲げると翼のカーブの角度が大きくなり、揚力が増す。揚力は、機体を空中に浮かせるために欠かせない力だが、常に大きければ大きいほどよいというものではない。

たとえば、離着陸のときは低速状態なので揚力か不足するが、上空を高速で飛んでいるときには、揚力が余ってしまうこともある。もっと揚力がほしいというとき、逆に揚力を少し減らしたいというとき、状況に応じて主翼の形に変化をもたせ、揚力を調整することができると、安定した飛行が可能になる。

実は、ジャンボは機体の大きさのわりには主翼が小さい。もし、400t(トン)もあるジャンボ機を離着陸させようと思ったら、相応の揚力を得るためにとてつもなく大きな翼が必要になる。そこで、小さめの翼でも離着陸時に十分な揚力を得るために画期的なフラップがとりつけられた。「トリプル・スロッテッド・フラップ」(3重隙間フラップ)がそれだ。

もともとフラップは主翼の一部を祈り曲げるものだったが、このトリプル・スロッテッド・フラップは、3枚重ねになったフラップを後方にスライドさせて広げ、翼面積そのものを増加させたうえで、折れ曲がるしくみになっている。その効果をみると、フラップを単純に折り曲げるだけで揚力は50%増すが、フラップ一枚をスライドさせて折り曲げれば2倍になる。それが3枚になれば、3倍以上の揚力を獲得できるといわれている。

一方、ジャンボ機には主翼前縁にも、2段式で下向きに伸びていくフラップが装備されている。これも着陸時の揚力アップを助ける強力な「武器」だ。そして、興味深いのは、フラップのしくみだけではない。フラップが主翼の下から滑り出してくるときの動きが、また、おもしろいのである。後ろ側のフラップは、ブラインドのように、1枚ずつ後方に伸びていく。

前側のフラップはふだんは翼の下に折り畳まれているが、「出動命令」を受けるとグルリと回転して顔を出し、下方に伸びながら折れ曲がっていく。まるで、SFアニメに出てくる重装備の戦闘ロボットが、強敵を相手にメカ変身する趣だ。主翼近くの座席に座れば、ひと味違った空の旅が楽しめるはずである。

— posted by 渉 at 12:48 am