ジャンボ機の主翼は8mも撓る(しなる)?

飛行機が空中を飛んでいるときは、主翼には下から上に引き上げる揚力がかかっているが、胴体には下に引っ張られる重力がかかっている。つまり、主翼と胴体が反対方向に向かおうとするために、主翼と胴体の接続部分は引きちぎられそうになるのだ。その結果、飛行中の主翼は上方に撓っている。

ちなみに地上では、胴体と同じく主翼にも重力がかかるので、翼は下向きにたわんでいる。「頑丈な造りが求められる機体の一部が撓ったりたわんだりしても大丈夫なのか?」と心配する人もいるだろう。しかし、機体はある程度、変形するくらいかよいのである。

もちろん、機体は丈夫で外部の力に影響されにくい材料と構造を持つことが基本ではある。とはいっても、300~400tもある機体を時速800~900kmの速さで飛ばせば、様々な「摩擦」や「抵抗」にあう。そのとき、あくまで機体の形を変えず、摩擦や抵抗に真っ向から立ち向かおうとすれば、機体にかかる力は益々大きくなるだけだ。

しかし、力がかかったとき、その力を吸収し、分散させることができれば、機体はより大きな力に耐えられることになる。撓ったりたわんだりする「しなやかさ」が「強さ」を生むのである。柳の枝が折れにくいのと同じ理屈だ。

飛行機の主翼は、飛行中にあう突風や気流の変化にも柔軟に対応できるよう、柔構造に設計されているのである。だから、旅客機の耐久性テストでは、主翼が十分に撓るかどうかの試験まで行なう。主翼をワイヤーで上方に引っ張り、どれくらいしなったら折れるのかを調べるのである。

たとえば、ジャンボ(ボーイング747)機の主翼は8mも撓ることが実験ずみである。もっとも、実際の飛行で8mも撓る(しなる)ことはない。通常の飛行で2m程度、悪天候時でも5m未満なので、ご安心を。

— posted by 渉 at 05:38 pm