旅客機が上昇し続けたら宇宙まで行ける?

旅客機に乗ったことのある人なら、一度は考えたことがあるのではないだろうか。スピードを上げて滑走路を走る機体がフワッと離陸し、空に向かってグングン昇っていくのを体感しながら、「このまま宇宙まで行けたらな・・・」と。しかし、現実には、旅客機が高度100㎞を超える大気圏外に飛び出すことは不可能である。最大の理由は、空気(酸素)がない、ということだ。

旅客機に使われているジェットエンジンは、燃料を霧状に噴射し、そこに点火して燃やして動かす。火をつけるためには酸素が不可欠なので、高度が高くなり、酸素が薄くなればなるほど、燃料を燃やすのが難しくなるのである。おそらく、高度10数kmあたりで、必要量の酸素が得られなくなり、エンストを起こす可能性が出てくる。

ただし、薄い酸素をさらに圧縮して使うエンジン(ラムジェットやスクラムジェット)などもあり、これを使えばもう少し上昇することが可能だ。しかし、それでも75kmくらいが限界といわれている。どちらにしても、空気のない宇宙空間をジェットエンジンで飛ぶことはできない。

ちなみに、スペースシャトルやロケットの場合は、酸素の「素」となる液体摩累を燃料ど一緒に積んであり、これで酸素をつくりながら燃料を燃やしている。だから、周りに空気がまったくないところで飛ぶことができるのだ。もうひとつの理由は、飛行機が空を飛ぶ原理にある。

飛行機が空中を前進すると、翼には前万から風があた見この風は翼の上と下に分かれて後方に流れていくが、このとき、翼上面と翼下面のカーブの角度か異なるため翼の上と下で気圧に差が生じるのである。

気圧はカーブの急な翼の上では低くなり、カープのゆるやかな翼の下では高くなる。その結果、翼の上では引き上げる力、翼の下では押し上げる力が生まれる。これらの力を「揚力こという」飛行機が空中に浮かんでいられるのは、この揚力のおかげだ。

ところが、空気の薄いところでは、翼にあたる風の量も少なくなるため、必要な揚力が得られないのである。まして、宇宙は真空空間なので、翼に頼る揚力はまったく期待できない。つまり、宇宙では翼は何の役にも立たないのである。

これとは別に、薄い空気のなかで十分な風量を得るために、飛行速度を上げるという方法も考えられるが、現在のジェットエンジンでは限界がある。また、宇宙に到達するには、地球の引力圏を抜けるために必要な速度(第2宇宙速度=秒速11.2km)まで加速することが必要となり、旅客機のエンジンパワーではとうてい無理だ。

たとえスピードが出たとしても、旅客機機体の外板は、それほど高速の状態には耐えられない。また、翼も音速(時速約1200km=マッハ1)を超える速さを想定した「設計」にはなっていないので、あまり高速になると分解するおそれがある。それでも、もし何かのはずみで宇宙に飛び出してしまったら・・・。機体の強度や構造上の問題から、機体は空中分解するか、運よく分解はまぬがれても、操縦不能となり、宇宙の塵と化すことになるだろう。

— posted by 渉 at 12:53 am